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使命新しい公教育を創造する
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サイト開設にあたって

物語を紡ぐ

人の集団に共有されてきた物語、「神話」はおよそ実際に起きたとは思われないものが多いですが、なぜ人は神話を語り継いできたのでしょうか。

「無意識」を発見した心理学者カール・グスタフ・ユングは、神話に人の心の成長を促す効果を見出したそうです(うまく心が成長できないとき人は苦しむ)。そしてユングの考えを承継した神話学者ジョーゼフ・キャンベルは神話の構造を発見し、私たちが、人が神話と同じような構造をもった物語を作り出せる可能性を示しました。

映画「スターウオーズ」は、このキャンベルの研究をもとに、ジョージ・ルーカス監督が神話のないアメリカに神話をつくろうとした作品であると言われており、また、私たちが映画やテレビ番組、漫画や小説などで、幾度となく「物語」を摂取することは、生きるために、心が栄養のようなものを欲しているからだと言われています。

キャンベルは言います。

「ある人間が他の多くの人のお手本になったとき、その人は神話化の過程に入っているわけです」(ジョーゼフ・キャンベル「神話の力」文庫版65頁)

嘉納治五郎は、いまや地球上のほとんどの国と地域にいる柔道修行者のお手本となっています。もしかすると、嘉納治五郎の物語は神話と類似の構造・効果を持っているかもしれない、すなわち、人々がこの世界で生きるために欲している物語の一つかもしれない。

神話という言葉を使いましたが、神のごとく崇めようという意味ではありません。嘉納治五郎の足跡を知ってそこからどんな物語を紡ぐのかは、それぞれ個人に委ねられています。それぞれにそれぞれが想う嘉納治五郎の物語があると思うのです。

物語を追体験する

近代以前の多くの地域では、「子ども」が「大人」になるという精神的な成長を促すため、神話を追体験する冒険イベント「通期儀礼(イニシエーション)」を大人が総出で行っていたそうです。神話を単に読み聞かせるのではなく、物語を伝え、そして追体験する機会を創ったからこそ、子どもは大人に変わることができた。

近代になって古い通過儀礼は失われましたが、もしかすると、昔やっていたように、世界中の大人が協力して、子どもたち一人ひとりに、嘉納治五郎の物語を追体験する機会を創ったら(新しい通過儀礼を創ったら)、より多くの子どもたちが素敵な大人に変身するかもしれない。

物語を追体験するには、物語を知ること、追体験する機会(物語の主人公として演じる機会)があること、そしてその機会が物語の再現であることを知っていることが必要ですが、実は、柔道修行者は、気づかずに、そのときどきの嘉納治五郎の物語を演じています。

例えば、今日、不安を感じながら道場の門をたたき、柔道を始めた少年は、嘉納治五郎がはじめて天神真楊流柔術の門をたたき、福田八之助から柔術を習い始めたそのときを、そして、今日、柔道を教え始めた先生は、柔術の稽古をきっかけにこれをより多くの人々に提供しなければならないと決意し、講道館で教え始めたそのときを演じています。

また、嘉納治五郎の人生を方向づけたといっても過言ではない重要な出来事の一つが29歳のときのヨーロッパ視察でしたが、NPO法人judo3.0は、この物語を追体験する機会をより多くの子どもたちに提供したいと思い、草の根の国際柔道交流を支援しています。

「嘉納治五郎はなぜ柔道をつくったのか?」という問いをもった人々が、その探求のすえ、それぞれの嘉納治五郎の物語を紡ぎはじめること、また、子どもたちにその物語を追体験する機会を創り始めること、本サイトがその一助になったら望外の幸せです。

酒井重義 NPO法人judo3.0代表

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